みなさん、こんばんは。
(eichan、最近どこ行っててん…というお決まりのツッコミも飛んできそうですが笑、変わらずとても元気に多動しています笑)
コーチ育成のコンサル生の方にはお伝えしていますが、最近は改めてAI×コーチングでひたすら実験中です。
カスタムGptsやGemsでのコーチング業務の効率化・トレーニング方法の洗練に加え、NotebookLMを使うことで自分の個人的な勉強や趣味のリサーチの生産性が劇的に上がりました。特に複数の論文や資料を一度にアップロードして要約・分析してくれる機能が素晴らしく、これまで丸一日かかっていた調べ物が2-3時間で完了するようになっています。
例えば、最新の第二言語習得論の研究論文を10本まとめて読み込ませて「B2レベル以上の学習者に効果的なトレーニング方法は何か?」と壁打ちをしていくと、各論文の結論を統合した回答を瞬時に出してくれるんです(そこに自分の原体験を掛け合わせると、新たなコーチングのヒントが出てきて脳がめちゃくちゃフル回転します)。
英語学習にも間違いなく活用できそうなので、機会があればまた詳しく紹介しますね。
そんな中今日のブログ内容は、最近コーチ育成のコンサル生の方から増えてきた質問へのアンサー。
「既にレベルが高くなってきたクライアントさん(B2以上)に、どのようなアプローチが有効ですか?」
というものです。今回の記事は中でもスピーキング力の向上に焦点を当て、どのようにしてC1以上のレベルにクライアントさんをお連れしていくかをお伝えします。
先に結論から言うと、B2以上からC1への過程における必須トレーニングは「ライティング」です。
イメージしやすいように、私のクライアントさんの事例も先にお見せしますね。
1日2-3時間徹底的に質の高い学習を継続されて、B2レベルで停滞していたクライアントさんが見事に飛躍的な成長を遂げられたケースです⇩



特に注目すべきは、WPM(Words Per Minute:1分間で話せる語数)100→150以上に向上しながら、同時にLU(Lexicon Use:語彙の豊富さを表す指標)も1個→3.9個程度と4倍に改善したという点です。
通常、WPMが上がると使う語彙が簡単なものになってしまうというトレードオフの傾向があるのですが、このクライアントさんは流暢性と語彙力・表現力を同時に向上させることができました。
海外カンファレンスでの発表動画を見せていただいたのですが、表現豊かで流暢な英語に私も本当に感動してしまいました…!

最近コーチ育成のコンサル生の方々が
・クライアントさんに圧倒的にコミットする
・コミットするからこそ成果が出て、かつ継続してくださるクライアントさんも増える
という循環を作れるようになってきていて、中にはこの半年の継続コース受注率が70%を超えているコーチもいます(13人中10人以上継続。毎回報告してくれるたびにクライアントさんも心から満足してくれた上での継続というご様子が如実にわかるので、私も心から嬉しいです)。
ただこのクライアントさんがコーチを信じて、長く、より高みを目指して継続してくれているからこそコーチがぶつかる壁が今回のテーマ。
「既に高いレベルのクライアントさんを、さらなる高みへ連れていくにはどうするか」です。
このB2レベル以上をC1、果てはC2近くまでレベルアップさせていくというのはコーチのあらゆるスキルが問われる魔境、とも言えるレンジ。
そして適切なアプローチがわかっていないと、クライアントさんに1年、2年と継続してもらったのに「全然伸ばせない…」という一番やってはいけない状態を平気で作り出します。
そこで今回は、多くの英語コーチが陥りがちな「ソリューションファースト」の落とし穴と、B2レベル以上のクライアントさんに本当に効果的なライティングトレーニングについて詳しくお話ししていきます。
それでは、いってみましょう!
目次
専門指標の詳細解説:
SPM・WPM・LUについて

こちらではまだスピーキングの指標を聞いたことがない方のために、改めて専門指標について説明していきます。(もう既に知っている、という方は飛ばしてください)
SPM(Sentence Per Minute)
SPMとは、1分間で何文話せているかを表す指標です。
文章の複雑さや構造の組み立て能力を測る上で重要な指標の一つです。
B2レベルでは9-11文程度、C1以上のレベルでは12-14文以上が目安となります。
WPM(Words Per Minute)
WPMとは、1分間で何語話せているかを表す指標で、英語の流暢性を測る最も基本的な指標です。
一般的な目安として:
- B1レベル:70-80 WPM
- B2レベル:90-110 WPM
- C1レベル: 120-140 WPM
- ネイティブ:150-200 WPM
今回のクライアントさんは90→140WPMという大幅な向上を達成しました。
LU(Lexicon Use)
LUとは、このブログの中での定義として、1分間でC1レベル以上の単語・熟語を何個使えているかという指標です。
これは私が独自に設定した指標で、語彙の豊富さと適切な使用能力を測定します。
例えば1分間のスピーチの中で:
- B2レベル:0-2個/分
- C1レベル:3-5個/分
- C2レベル:5個以上/分
という数を使えていれば、高尚な英語が話せていると考えることができます。
【警告】多くのコーチが陥る
「ソリューションファースト」の危険な落とし穴

まず最初にお伝えしたいのは、多くの英語コーチが知らず知らずのうちに陥っている「ソリューションファースト」思考の危険性です。
ソリューションファーストとは、「このトレーニングは効果がある。成果も出してきた」と信じて、そのトレーニングをどんなフェーズやレベルのクライアントさんに対しても適用してしまう考え方のことです。
例えば、こんな発言をしていませんか?
- 「シャドーイングは良いトレーニングだから、みんなやるべきです」
- 「1分間スピーチは効果的だから、どのレベルでも有効です」
- 「オンライン英会話をやれば必ず話せるようになります」
これらは全て「ソリューションファースト」の典型例です。
特にB2以上のレベルに入った人にスピーチや英会話を盲目的にやらせ続けるのは、思考停止してしまっている状態と言わざるを得ません。
多くの英語コーチがこの「ソリューション(トレーニング)ファースト」の落とし穴にハマってしまっていることが多いのが現実です。
「このトレーニングは効果がある。成果も出してきた」と信じて、それをどんなフェーズやレベルのクライアントさんに対しても適用できると考えるのは、プロ意識が足りないと言わざるを得ません。
多くの場合、それだとクライアントさんの英語力は伸びないという現実があります。
プロに求められる
「課題ファースト」思考
では、どのように考えればクライアントさんの成果を出すことができるのでしょうか?
それは、「課題ファースト」な思考です。
例えばスピーキング力の場合でいうと、概念化と文章化にきちんと要素を分解して「この部分に課題があるな」と仮説を設定したら、初めてそこでソリューションを考える、という流れの思考のことです。
具体的な違いを見てみましょう。
定型的な発想(ソリューションファースト):
「文章化を鍛えるトレーニングには瞬間英作文が効果的なので、それを繰り返しましょう」
プロコーチの発想(課題ファースト):
「今のあなたのレベル、そして課題を整理すると概念化→文章化→音声化の中の概念化にリソースを残せていない(余裕がない)ことが一番の課題です。そしてこれまで文章化・音声化を自動化するためのトレーニングは十分行ってきたので、次は概念化の余裕をより生み出すために「自動化フレーズ」をインプットしていきます」
※「自動化フレーズ」などについての内容は後述します。
この違い、いかがでしょうか?
プロの英語コーチは必ず先に課題を特定してから、その課題に最適なソリューションを提案するという流れを踏みます。
C1レベルの高い壁:
1分間スピーチ・オンライン英会話頼みの限界

先ほどの前提を踏まえると、特にクライアントさんの英語力が高くなればなるほどスピーキングの改善=瞬間英作文、1分間スピーチ、オンライン英会話をやらせておけばいい、というシンプルな解決策だけにはならないことがわかります。
では、なぜB2レベル以上のクライアントさんに対して、1分間スピーチやオンライン英会話だけでは限界があるのでしょうか?
1分間スピーチの効果と限界
1分間スピーチは確かに効果的なトレーニングです。
特にB2レベル未満までの方が言いたいことを簡潔に、簡単な表現でWPMを意識して速める練習には非常に有効です。(これはいつもコンサル生の方々にも勧めている通りです)
一方で、B2以上のレベルになると1分間スピーチをひたすら続けるだけではアッパーが来ます。
なぜかというと、制限時間の中で自分の意見を言おうとするため、どうしても自分が慣れ親しんだ表現や語彙に逃げてしまうからです。
例えば、多くの学習者が「It is important that…」という表現ばかりを使ってしまいがちです。これはすでにクライアントさんの中では自動化・内在化されているためです。
しかし、ビジネスで英語を使うなど実務の現場では使う表現・語彙、などによって相手やCountepartからもたれる印象が大きく異なります。
つまりコミュニケーションの効果を最大化していくためには、日本語と同じで「It is essential that…」「It is crucial that…」といったより洗練された表現も自然と使えるようになっていく必要があります。(日本語でももちろん簡易な言葉でも通じますが、ビジネスの場で中学生や高校生同士が使うような日本語で話していたら違和感がありますよね。英語でもこれは全く同じです)
ところが、1分間スピーチの練習では時間的プレッシャーにより、こうした新しい表現を試す余裕がないのです(=スピーチだけでは、表現力は鍛えきれない)。
オンライン英会話頼みカリキュラムの問題点
そして音声知覚・意味理解・概念化・文章化・音声化を鍛えられる万能トレーニング、オンライン英会話についてもレベルが高い方にとっては同様の問題があります。
英会話も瞬発性を求められる対話なので自分が得意な表現ばかりを使ってしまったり、相手に合わせて焦って返答したりするため、結局は使う語彙や表現のバラエティが増えません。
さらに深刻なのは、相手がいることによる心理的プレッシャーです。このプレッシャーが、新しい表現や語彙を試す機会を奪ってしまいます(「伝えなきゃ!」という気持ちが優位になる)。
結果を出せない英語コーチがよくやってしまう落とし穴は、まさにこの1分間スピーチやオンライン英会話頼みの(それだけに限定した)カリキュラムを続けてしまうことです。
もちろんある程度まではそれで伸びますが、必ず天井が来ます。そして最終的にクライアントさんが本当に言いたいことを”日本語のように”言える状態にはできないことが多いのです。
概念化と文章化の同時処理問題
ここで改めて整理していくと、1分間スピーチやオンライン英会話の最大の問題は、
概念化(言いたいことを考えるプロセス)と文章化(考えたことを適切な文法と語彙を使って英文にするプロセス)を同時にやらなければいけないという点です。
もちろん1分間スピーチとオンライン英会話ゴリ押しのトレーニング・カリキュラムでも、B2レベルまでなら十分到達できます。
一方で、C1レベル以上を目指すのであれば、概念化と文章化を課題としてそれぞれ分解して個別具体の課題にtackleするトレーニングを組んでいかないと一向に伸びないという現実があります。
ライティングこそがC1突破の
最適解である理由

では、なぜライティングがC1レベル到達には必要なトレーニングなのでしょうか?
それはライティングでは時間制限がないため、何を言うか、どんな語彙・表現を使うかをしっかり考えることに集中でき、
それによって「自分が本当によく使う表現・使いたい表現」を見つけ出すことができるからです。
私がクライアントさんに行っていただくライティングのトレーニング手順は下記です。
- クライアントさんに身近なテーマを選定し、「1分間スピーチ」を行う
- スピーチを行った後に5-10分程度で改めて自分が言いたかったことを
日本語でライティングする - ②を見ながら”日本語をシンプル化することなく”英語でライティングする
(ここからはコーチの重要な添削とフィードバック⇩) - その方が日本語でよく使いそうな表現、今後も使いそうな表現を選別する
- ④の単語・表現を添削に記載の上、こちら側でリストを作成していく
下記の画像の下線を引いている箇所が、「よく使いそうな表現・今後も使いそうな表現(これを「自動化フレーズ」と呼びます)」を日本語から選別しているところです。

そして選別した「自動化フレーズ」を下記のようにまとめて、クライアントさんがその単語や表現を使うことができたらマークをつけていきます。

この「自動化フレーズ」にC1以上のレベルの単語・熟語を含めていくことで、
・自動的に使えるフレーズが増える
→文章化が自動化され、概念化の余裕も増える
・使う語彙・表現が自然とC1以上のレベルに昇華する
→語彙・表現の豊かさが増え高尚な英文になる
=流暢性(SPM・WPM)×表現の幅(LU)が同時に向上する
という高いレベルを実現していくことができます。
【成功事例】
1年間でWPMとLUを同時に向上させたクライアントさん

ここでは、実際に上記のライティングトレーニングを通して劇的な変化を遂げたクライアントさんの事例をご紹介します。
クライアントさんの背景と課題
受講期間:1年間
目標:
※C1レベルの目標値としてわかりやすくリスニングも入れていますがそちらは別記事で取り扱うので、今回はスピーキングのみ深掘りしていきます。
⚫︎定性目標
・国際的な機関などの面接時、米国や海外生活で想定される政治経済・金融に関する話題から社会問題や日常生活に関わる様々な話題について、英語でストレスなく会話(リスニング・スピーキング両方)できるようになっている状態
・英字新聞や雑誌・小説などもストレスなく読めている状態
⚫︎定量目標
・音声知覚
- WPM200〜220程度をストレスなく聞き取れる状態
- シャドーイングはWPM220-240程度を3日以内で終わらせられる状態
・意味理解
- WPM160~180以上
(読んで意味理解できる速度) - WPM180〜220程度のauthentic多聴で7割以上の理解ができる状態
- (バックグラウンドの聞きにくさ、アクセントの変化などを含んだもの)
・語彙量
- 15,000語以上が定着している状態
(句動詞・金融単語などを含む)
・スピーキング(文章化)
- 基本的な文法/単語を使った短い文は2秒以内に発話/3-5秒以内に発話完了
- (場面を想定して必要なものからカバー)
- スピーチやオピニオン等では、英検1級やDistinctionレベルの
単語・フレーズを1分以内に3〜4個以上駆使できている状態 - (スピードだけではなく高尚な単語・表現、複文が美しく使えている状態)
⇩
LU(Lexicon Use):
C1レベル以上の単語3-4個以上
SPM(Sentence Per Minute:1分間で話せる文数):
平均12~13以上
WPM(Words Per Minute:1分間で話せる語数):
平均110~120 以上
Before(受講開始時の状態)
英語レベル:B2程度
LU:C1レベルの単語が1分あたり1個程度
SPM:10程度
WPM:90程度
元々ある程度スムーズに英語を扱える状態でしたが、課題としては表現が稚拙で限定的、かつ流暢生も海外ビジネスで英語を使うと言うことを考慮すると不十分という点でした。
つまり、まさに今回お話ししているライティングが課題を解決するための効果をもたらすトレーニングになるという状態でした。
After(受講終了時の成果)
英語レベル:C1以上
こちらは画像の幅的に半年分になっていますが、1年全体で見ると
Lexicon use:
平均3.9(1年前から+3.3)
SPM :
平均15(1年前から+5.8)
WPM :
平均142(1年前から+49)



という素晴らしい成果に。
最終的には上記のようにSPM・WPM(流暢性)も上がったと同時に語彙力の幅も増え、英語が非常に洗練され、高尚な響きになっていきました。
通常、WPMが上がると使う単語が簡単なものになってしまう傾向が誰しもありますが、このクライアントさんは、両方を同時に向上させることが実現できた(かつ流暢生はもはや伸びすぎです笑)という素晴らしい例です。
海外カンファレンスでの大成功
そして何より感動的だったのは、冒頭にも少し画像を載せていますがクライアントさんが実際に海外のカンファレンスで、一発どりの英語インタビューで自信をもって、表現豊かに、そしてフィラーなど英語らしい言葉も使いながら、非常に流暢に英語を話している場面の動画を送ってくれたことです。
その変化に、私も本当に、心から感動しました。


(eichan大感動)
そして海外に旅立たれるクライアントさんがコース卒業日に言ってくださったコメントが、
「自分が今まで英語をやってきた中で、一番勉強していて英語力が洗練されていたのは数十年前の大学時代でした。
でも今改めてこうやって本気で英語のトレーニングをしてみて、
間違いなく今が『自分史上一番英語ができる』と自信を持てます」
というもの。
これがあるからコーチングやめられない〜〜〜!と思わず冷静に卒業式と面談を終わらせてZoomを切った後、ガッツポーズしまくって飛んで喜んだeichanでした。
クライアントさんがご自身の英語に「自信を持てている」、それがコーチとしては何にも変え難い、本当に嬉しい瞬間ですよね。
まとめ

いかがだったでしょうか?
今回は、B2レベルで停滞しているハイレベルなクライアントさんを次のC1ステージに押し上げるライティングトレーニングの効果について、具体的な成功事例とともにご紹介しました。
重要なポイントをまとめると:
✔ 「ソリューションファースト」ではなく「課題ファースト」で考える
✔ B2レベル以上では1分間スピーチ・英会話だけでは限界がある
✔ ライティングで概念化と文章化を分解して鍛え、WPM(流暢性)とLU(語彙力)を同時に向上させることを目指す
B2レベルで行き詰まっているハイレベルなクライアントさんを伸ばすためには、ライティングが最適です。
そして、常に「このトレーニングが絶対だ」とソリューション(トレーニング)ファーストで妄信的になるのではなく、常にクライアントさんの「課題ファースト」でそのあとにソリューション(トレーニング)を考えましょう。
今回ご紹介した手法は、他のクライアントさんでも再現性高く成果が出ているものです。現在B2以上のレベルのクライアントさんを担当されているコーチの方は、ぜひ実践してみてください。
(今回ご紹介しきれなかったハイレベルの方向けのリスニングトレーニング、AIを使ったトレーニング方法などは、今後の記事でまとめていきます)
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今後も英語コーチングの魅力を存分に伝えていきますので、
引き続きよろしくお願いいたします!